呼びかけ

 日本では年間1000万匹以上の動物が医薬品、農薬、工業薬品、食品添加物、化粧品やバス・トイレタリー製品その他の日用薬品の開発、あるいは臓器移植その他の先端医療、脳研究、公害毒性試験、教育実習等々のために日々使用され、殺されています。動物実験はこれらの目的のために、動物に意図的に障害や疾病を与えたり、解剖したり、毒を飲ませたりする行為です。動物実験は如何に生活や産業にとって有益な面があったとしても、動物に大きな苦痛や死をもたらしていることもまぎれもない事実です。

  このような倫理的に大きな問題をはらんだ行為に対して、例えば欧米諸国においては、施設の許可制、実験者の免許制、実験計画の許可制等の厳しい法規制が課せられていますが、日本では僅かな努力規定や基準、各機関任意の自主規制を除き、このような制度は全くの皆無です。

  人と同様に苦痛やその他の感受性を持つ動物たちを、何のルールもなしに、これらの危険な行為に無秩序に使用することは果たして許されることでしょうか。動物実験の是非と動物実験のルールの是非は別問題です。例え動物実験を認める立場に立ったとしても、動物実験に何のルールも必要ないということにはならないはずです。

  科学や科学技術の追及は無条件な善ではありません。臓器移植やクローン、遺伝子組み換え等の問題と同様に、そこには必ず倫理的な判断が不可欠であり、動物実験もまたどこまでが許されて、どこからが許されないのか、広く社会的に議論されることが必要です。そのためには動物実験の情報が公開され、どんな分野で何のためにどんな動物がどんな実験でどれだけ犠牲になっているかが把握できなければなりません。

  現代社会において動物実験は、医薬品や食品、日用品に使われる薬品をはじめ、知らず知らずのうちに私達の生活のありとあらゆる要素を構成しており、誰もが無関係ではいられません。その意味で私達はこれらの問題を知る義務があり、またそれについて正確な情報を基に考え、妥当な判断を下す義務があります。

  私達はこれらの観点から、動物実験における動物の犠牲の数的、質的な削減、及び動物実験に関する情報公開の促進と、それによる個々の動物実験の妥当性を社会的に議論できる仕組みを実現するための法制度の整備の必要性を社会に対して訴えて参ることと致しました。

  皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。