動物実験 別法化の流れに懸念

 現在、動物愛護法が国会議員の間で議論されていますが、中でも動物実験の問題で揉めていて、動きが遅れています。

 

 動物実験の法改正については、前々回(99年)、前回(05年)と見送られてきた経緯があり、動物保護(愛護、福祉、権利)を望む市民の長年の悲願となっています。

 

 今回の法改正では今までで初めて環境省が施設の届出制を最初から議論の遡上に乗せており、また初の民主党政権下での改正作業ということで、これまでになく、実現の可能性が期待されてきました。

 

 しかしながらここへきて、民主党は、以下の記事(無料購読で全文閲覧可)にあるように、業界の意向を受けた党内の反対勢力の猛抗議で、動物実験を動物愛護法から外す方向に方針を固めようとしています。
https://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=38484
https://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=38424

 

 動物愛護法が対象としてる動物は、愛玩動物、展示動物、実験動物、畜産動物となっており、実験動物も畜産動物も等しく本法で保護される対象です。

もし実験動物や畜産動物を除外してしまえば、動物愛護法は単なる「ペット法」になってしまいます。

 

 確かに「動物実験」については、担当省庁の問題等はありますが、文科省や厚労省は動物愛護の観点からは動物実験を見ていません。その点、動物愛護法は唯一、動物を保護する観点で見ている法律です。

 

 表向きは「別法で」対処するとされていますが、国会終盤のこの時期から一から新法の制定をするというのはほとんど現実性の薄い提案と考えられます。

 

 また、動物愛護法と切り離されてしまえば、見直し義務規定のある動物愛護法とは違い、法制化の根拠がなくなってしまいますのでうやむやになってしまう恐れが非常に強いと思われます。

 

 ただでさえ、来年には衆議院の任期満了を控え、いつ衆議院の解散総選挙があるかわかりません。

 

 もし解散になってしまえば、政局はリセットされ、新法の話は立ち消えになる可能性が極めて高いと思われます。

 

 このように、党内の反発により、動物実験を理由として、動物愛護法の改正ができなくなるから、動物実験を外そうという動きは、実は99年の改正時にも自民党政権下で全く同じように起こっています。

 

 このような実態の背景には、当然ながら、医学界、薬学界、製薬業界等の動物実験関係者による強い法改正反対活動があることは明らかで、日本の状況はこの13年間基本的に全く変わっていないことを示しています。

 

 いつになれば日本はこの悪しき構造から抜け出て、深い闇の中にある動物実験に光を当てることができるのでしょうか。

 

 私たちはこのような状況を大変憂慮すべき事態として深刻に受け止めています。

 

 動物実験は愛護動物を意図的に病気にしたり怪我をさせたり、また最後には基本的に殺処分するという、倫理的に大変大きな問題を伴う行為です。

 

 日本の実験動物使用数は年間1000万匹~2000万匹と言われ、先進国でもトップクラス(EU27各国の総数に匹敵)であり、その責任は決して軽くありません。また他の問題と比較しても、例えば犬猫の殺処分が年間20万匹なのに対し、動物実験で殺処分される数は50~100倍ということになります。個体が受ける苦痛の大きさもペットや産業動物と比較しても著しく大きなものと考えられます。

 

 私たちは、一部の動物の状況は良くなるからという理屈により、動物実験の問題が切り捨てられることを大変危惧しています。それらは前々回(99年)、前回(05年)と繰り返されてきたことだからです。

 

 業界主導のやり方で別法を作る方向性は動物のためになる保証がありません。
 (実際、別法化に関して我々動物保護団体は一切相談を受けていません。)

 

  私たちはあくまでも動物愛護法の中で、実験動物を保護するための法律作成を求めます。

 

 本件に関するALIVEの声明も参考にしてください。
http://www.alive-net.net/law/kaisei2012/seimei_experiment_2012.htm